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「生物学的に間違ってる」 とかいう言説のバカバカしさ


同性愛について、「生物学的に間違ってる」って言葉、時々耳にします。

 

彼らによると
「生物は子孫を残し、種を存続させるために生きている」
らしく
「子孫を残さない同性愛は、その原理に反する」
ゆえに
「同性愛は生物学的に間違っている」
らしいのです。

 

 


ちょ、待てよ。

 

 

生物学を専攻し、今もその業界の片隅にいる者として、生物学がこのような言説に使われるのは非常に腹立たしい。
なので、この説に反論してみようと思います。

(以下は個人的見解です。悪しからず。)

 

①生物学で生物を否定することはできないよ

②子孫を残すことが生物の目的ではないよ

③同性愛者は子孫を残さないなんて嘘だよ

 

 

...簡単に言うとこれだけなのですが、もう少し説明してみます。 

 


①生物学で生物を否定することはできないよ

まず、生物学とは何か、です。


生物学とは、この世に存在する命あるもの=生物について、そのしくみや生態をなんとかして理解し説明しようとするもの。とわたしは考えます。


生物はどうやって生きてるの?どうしてこんな行動をするの?みたいな、摩訶不思議で複雑怪奇な現象をどうにかこうにか調べて、仮説を立てて、証明して、言葉にするのが生物学です。

 

だからまず、生物ありき、なのです。

 

例えば、未知の生物がいたとして、その生物がこれまでの生物学では説明できない行動をした時に、「今までの生物学で説明できない!この生物は生物学的に間違ってる!」とはならないのです。生物学が追いついてないだけでね。

 

生物学が生物を否定するなんてあり得ないのです。

 

人間も、当たり前ですが、自然界に生きる生物の一種なので、「同性愛」という今までの生物学で説明できない※行動が見られた時に「生物学的に間違ってる!」なんて言えないわけです。
(※実際、同性愛が今までの生物学で説明できないかどうかは、、どうなんでしょうね。わたしはあいにく知見を持ち合わせていませんが、今までの生物学で説明しようとする色々な説はありますね。)

 

 

②子孫を残すことが生物の目的ではないよ

つぎに、生物は子孫を残すことを目的に生きていて、種の存続が本能だ、みたいな説について。

 

はっきり言って間違ってます。
生物に目的、なんてありません。

 

例えば、ある種の進化を説明されたときに「この生物はどういう目的でこういう進化をしたのですか?」と聞く人がいますが、生物は目的を持って進化しません。
生物が、こういう方向に進化したい!といって、自分たちのDNAを変えられるわけではないでしょう?

 

目的ではなく、あるのは「変化」と「選択圧」です。

 

とある生物の群れの中に、時間経過とともに、あるいは世代を経たときに、偶然様々な個体差が出てきて(変化)、そのうち生存に不利なものだけが生き残れずに消えていく(選択圧)。
それが何度も何度も繰り返されて、後から見るとあたかも一定方向に、目的を持って「進化」しているように見えるのです。


繁殖などのしくみもこう言った「進化」の過程で獲得されてきたもののひとつですが、生物が「繁殖して種を残すぞ!」という目的をもって進化してきたわけではないですし、種を残すことが生命の目的でもないです。

 

まぁ繁殖などして次の世代を効率よく残さない種は、ある時点で途絶えるので、地球上に存続する種が次の世代を残す手段を持ってるのは、当たり前っちゃ当たり前ですけどね。ですがそれはあくまでも結果であって目的ではありません。

 

 

 ③同性愛者は子孫を残さないなんて嘘だよ

少し前、杉田某氏の「生産性がない」発言が問題になりましたが、世の中のアンチLGBTの方々はこれについてかなり思い違いをしてらっしゃる。意図的なのかどうなのか知りませんけども。

 

少し生物学の話からは離れますが、
そもそも、「子ども欲しい」と思うか、「子どもいらない」と思うかは、同性愛者であるか異性愛者であるかに相関しない感情です。

 

異性愛者の中にも同性愛者の中にも、「子ども欲しい」っていう人も「子どもいらない」っていう人もある一定の割合でいるでしょう。
異性愛者は全員「子ども欲しい」と思ってて、同性愛者は全員「子どもいらない」って思ってるわけではないですよね?)

 

ですが、異性愛者と違って、同性愛者が「子ども欲しい」と思っても、実際に子どもを持つまでには数々の障害が待ち受けています。

 

まず、同性カップルはいくら愛し合っていても自然に子どもを授かるわけではないので※、もし子どもが欲しいとなるとなんらかの特別な手段を取る必要があります。

(※この部分を指して「同性愛は生物学的に(以下略)」という人もいそうですが、そういう人は①を読み直しなさいね。)

 

異性カップルの場合、自然に妊娠しないとすると病院に行って不妊治療を受けますが、同性カップルの場合は妊娠するために病院にかかるということができません。
なぜなら日本では病院での不妊治療は結婚しているカップルしか利用できないから。そして同性カップルには結婚が認められていないから。

 

女性カップルの場合は自分たちで精子ドナーを探して、自分たちで提供してもらった精子を体内に入れるという方法がありますが、男性同士のカップルの場合はさらに色んなハードルがあります。日本では代理母などの方法も難しいでしょうし。


また、日本では同性の結婚が認められていない、同性愛者や同性カップルに対して差別や偏見があるなど、同性愛者にとって生きづらい状況があります。そんな日本で子どもを持つ、ということに躊躇する人も当然いるでしょう。

子どもは欲しいけど、今の日本じゃ難しいかな…と諦めている同性愛者は沢山いると想像できます。
先に「子どもが欲しいと思うか思わないかは同性愛者であるか異性愛者であるかに相関しない」と書きましたが、同性愛者がこういったあきらめを強いられているという現状はあります。

同性愛者は子どもを持たない、というのは同性愛者の性質ではなく、社会的に押し付けられたものです。

 

某氏の発言については、こんな風に同性愛者が子どもを持つには山のように障害があるのにそれを放置し、さらに同性愛者に対するヘイトをばら撒くことでむしろ子どもを持ちづらい状況を強化しながら、「同性愛者は生産性がない」なんてよくも言えたもんだなと怒りを覚えます。

 
実は、このような障害を乗り越えて子どもを一緒に育てている同性カップルは日本にもすでに沢山います。
某氏の発言はこのような方々の存在を無視しているという点でも無知で無礼です。

 


.........
以上、
「同性愛は生物学的に間違っている」
という言説にわたしなりに反論してみました。

「生物学的に間違っている」の類義語に「自然の摂理に反する」というやつもありますが、

生物学的に間違っている、とかいう人は生物学をきちんと学んだことがない人だろうし、自然の摂理に反する、とかいってる人は「私の信条に反する」っていってるだけなので、「お前の信条を人に押し付けんな馬鹿者」とだけ申し上げて、今日はこのへんで。

 

あでゅー!

 

 

 

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